2018年7月21日土曜日

創薬ベンチャーの進め方(希少疾病創薬)

 ある創薬ベンチャーを起業した方と一緒に、大手医薬品メーカーを退職された専門家からお話を聞いてきました。
 そのベンチャーは、希少疾患(難病)に対して薬効がある物質を見つけました。希少疾病用医薬品(orphan drug)の有力候補物質を見つけたということです。この方は、これを大学での研究の延長線上では、薬を作るところまではできないと気づき、研究者の地位を捨て、起業したということでした。
 幸いこの病気の患者の細胞を入手することができ、その細胞にその候補物質を投与すると、効果がみられたということでした。さて、このつぎに、どのようなステップを踏む必要があるでしょうか。
 専門家の方によれば、次に実施する必要があることは次の通りです。
1、マウスにその物質を投与して、薬の成分が一定の濃度で全身を巡るのかどうかを調べる (一定以上の濃度での薬効があったということですので、血中濃度がそこまでいかないと薬効がないということになります、脳に到達する必要がある疾病の場合には、血液脳関門を通る必要がある、低分子だと通るがそれより大きいと難しい)
2、マウスでその薬の毒性を調べる
3、インパクトファクターの高い学術誌に論文を掲載する(できる限りその分野の権威とされる研究者と共著にする。これにより、薬効のある物質であることが、第三者から認められたということになる)
4、3をもって、資金調達を行う(AMED補助金 and/or VC)
5、(非)臨床試験を行うための製剤を行う(製剤はCMOという専門のメーカーに依頼します、その前に経口薬か注射薬かを決める必要がある、注射薬は製剤コストが高い)
6、PMDAに事前相談に行き、非臨床試験(薬理試験:効力を裏付ける試験、薬物動態試験、毒性試験)必要かどうかを聞く(希少疾病用医薬品の場合、非臨床試験が不要な場合があるため)
7、非臨床試験が必要であれば、それだけでかなりのコストがかかる
8、臨床試験に入る(このためには必要量の製剤が必要)

 このミーティングの後、このベンチャーの社長と少し話しましたが、研究者としてこれまでやってきたことと、全く違う知識と経験がないと創薬ができないことが良く分かったということでした。まさに、筆者もそのとおりだと感じました。




0 件のコメント:

コメントを投稿