2019年2月20日水曜日

仮想通貨による資金調達ファンド

リクルートが、ICOに対して資金提供するファンドを立ち上げたようです。
リクルートホールディングス(HD)は18日、仮想通貨技術を使って資金調達する企業向けの投資ファンドを設立した。投資の対価として株式ではなく、投資先企業が発行するデジタル権利証「トークン」を取得する。仮想通貨の基本技術となるブロックチェーン(分散型台帳)技術のノウハウを取り込み、新技術を使ったビジネスモデルを発掘する。
新たに設立した「RSPブロックチェーン・テック・ファンド」(シンガポール)の投資枠は2500万ドル(約27億円)で、主に海外のスタートアップに投じる。(日経2019年2月19日)
「仮想通貨技術を使って資金調達する企業向け」とし、ICOとはしていませんが、ICOのことだと思います。
皮肉にも、同じ日の日経には、次の記事も掲載されていました。

ICOの資金調達、世界で急減速
規制強化や詐欺の横行で
仮想通貨技術を使った新興企業などの資金調達(ICO=イニシャル・コイン・オファリング)が急減速している。2018年10~12月期の世界の調達額は16億4千万ドル(約1800億円)と前の四半期比で33%減り、17年4~6月期以来の低水準になった。18年通年では過去最高になったものの、詐欺の横行や各国の規制強化で投資家離れが深刻になっている。(日経2019年2月19日)

日本では、ICOは実質上禁止されていますので、リクルートのファンドが資金提供するのは海外でのICOに限られます。

ICOでは出資の見返りに「トークン」を発行します。IPO(株式上場)の場合の株券に相当するものです。日経の上記の記事では次のように報じています。

ICOとは企業や団体が「トークン」と呼ばれる新しい仮想通貨をつくり、投資家への売却を通じて資金を調達する仕組み。英調査会社コインスケジュールの調べによると、ICOの実施件数は18年10~12月期が183件と、7~9月期より15%減った。19年に入っても公表済みの案件の延期が相次ぐ。(中略)公益財団法人、国際通貨研究所の調べによれば、18年12月末に値が付くトークン360銘柄のうち市場価格が発行時の価格を上回っているものは約16%にすぎなかった。(日経2019年2月19日)

ICOに対して資金を出し、トークンを受け取ったとして、すぐにキャッシュに変えれば、キャピタルゲインを受けることができません。このため、投資先の企業価値が上がるまでトークンを持っていることが必要になると思います。

何だかリスクが高そうな投資です。リクルートに勝算はあるのでしょうか。

2018年11月27日火曜日

ベンチャーの出口としてM&AとIPO、どちらが良いか

日経新聞(2018年11月25日)によれば、ベンチャーのエクジット(出口)として、M&Aが最近増えてきているとのことです。

「日本のスタートアップの投資回収の出口はこれまで新規株式公開(IPO)が中心で、16年はIPOがM&Aの4倍を占めた。18年1~10月の国内IPO件数は69件で、M&A件数の1.4倍と差が小さくなってきた。」日経新聞(2018年11月25日)

IPOがまだM&Aより多いですが、大分近づいてきました。米国では全体の9割がM&Aとのことですので、圧倒的な差になっています。

単純に、米国のようにM&AがIPOより良いのでしょうか。日本は米国のようにもっとM&Aによるエクジットを増やすべきでしょうか。ここで少し、ベンチャーの出口としてIPOとM&Aを考えてましょう。

IPOは、ベンチャーの出口ではありますが、上場会社としての成長の入口です。上場以降の成長戦略がないとIPOの意味がありません。また、IPOは会社が成長して大企業の仲間になるということですので、上場前の時のように「イチかバチか」の経営はできません。上場会社としての内部統制、コンプライアンス、組織管理が必要になります。

これがうまくできるベンチャー経営者もいると思いますが、小規模なベンチャー経営に魅力を感じる経営者もいると思います。

M&Aの場合は、大企業に買収されるということですので、それ以降は大企業の子会社または一部門として運営していくということになります。一般にベンチャー経営者はそこで身を引くのが普通です。

米国ではシリアル・アントレプレナーと言って、ベンチャー企業を売却して次々と立ち上げる起業家がいます。そういう人たちは、エンジェル投資家として多くのベンチャー企業を育てます。これはM&Aによるエクジットが前提だからできることです。上場会社の経営者になったら、その会社の経営に専念することになり、シリアル・アントレプレナーは育ちません。

日本では、IPOが多いということは、シリアル・アントレプレナーが育たない土壌であるということです。大企業の経営者とベンチャー企業の経営者はタイプが違うのは普通です。ベンチャー企業の経営者層を厚くすることは、日本でのベンチャー育成に必要なことだと思います。

そのためにはM&Aによるエクジットを増やすことが必要です。しかし、M&Aは買収してくれる企業があって成立します。日本企業は、徐々に変わってきていますが、まだまだ自前主義で、ベンチャーは信用しないという姿勢が残っていると思います。

一方、M&Aによるエクジットが増えないのは、日本のベンチャーが、日本企業にM&Aしてもらおうとするからではないでしょうか。日本企業に拘る必要は何もありません。東大発のロボットベンチャーのSHAFTがグーグルに買収されたのは有名です。

ベンチャーは、もっと海外に目を開いて積極的に売り込むことが必要です。海外企業が日本のベンチャーに目が向かないのは、日本のベンチャーの市場が日本に閉じているからではないでしょうか。海外企業の目に触れるような、グローバル市場で勝負するベンチャ―が出てくる必要があります。

反対に、日本のマザーズ市場への上場が比較的簡単だということも、日本のベンチャーがIPOに行ってしまう原因かもしれません。日本市場の存在感はグローバル市場に比べたら小さくなって来たとは言え、結構大きいので、日本市場だけをターゲットにしても、それなりの会社規模になり、IPOできてしまうのです。

ただ、IPOの場合は、上場準備に入るために組織体制の構築するなど、その時点で会社の体(てい)を整え、大企業になる準備に専念することが必要になります。M&Aの場合はこの必要がありません。ベンチャーとして全速力で走りきった後の出口がM&Aです。その点で、M&Aに比べればIPOには時間がかかることになります。

日本のベンチャーは、もっと海外に大きく目を開いて、グローバル市場で勝負をするようになれば、M&Aがもっと増え、国内での優秀な起業家層を厚くすることが、さらなるベンチャーを育てる土壌になると思います。

2018年7月21日土曜日

創薬ベンチャーの進め方(希少疾病創薬)

 ある創薬ベンチャーを起業した方と一緒に、大手医薬品メーカーを退職された専門家からお話を聞いてきました。
 そのベンチャーは、希少疾患(難病)に対して薬効がある物質を見つけました。希少疾病用医薬品(orphan drug)の有力候補物質を見つけたということです。この方は、これを大学での研究の延長線上では、薬を作るところまではできないと気づき、研究者の地位を捨て、起業したということでした。
 幸いこの病気の患者の細胞を入手することができ、その細胞にその候補物質を投与すると、効果がみられたということでした。さて、このつぎに、どのようなステップを踏む必要があるでしょうか。
 専門家の方によれば、次に実施する必要があることは次の通りです。
1、マウスにその物質を投与して、薬の成分が一定の濃度で全身を巡るのかどうかを調べる (一定以上の濃度での薬効があったということですので、血中濃度がそこまでいかないと薬効がないということになります、脳に到達する必要がある疾病の場合には、血液脳関門を通る必要がある、低分子だと通るがそれより大きいと難しい)
2、マウスでその薬の毒性を調べる
3、インパクトファクターの高い学術誌に論文を掲載する(できる限りその分野の権威とされる研究者と共著にする。これにより、薬効のある物質であることが、第三者から認められたということになる)
4、3をもって、資金調達を行う(AMED補助金 and/or VC)
5、(非)臨床試験を行うための製剤を行う(製剤はCMOという専門のメーカーに依頼します、その前に経口薬か注射薬かを決める必要がある、注射薬は製剤コストが高い)
6、PMDAに事前相談に行き、非臨床試験(薬理試験:効力を裏付ける試験、薬物動態試験、毒性試験)必要かどうかを聞く(希少疾病用医薬品の場合、非臨床試験が不要な場合があるため)
7、非臨床試験が必要であれば、それだけでかなりのコストがかかる
8、臨床試験に入る(このためには必要量の製剤が必要)

 このミーティングの後、このベンチャーの社長と少し話しましたが、研究者としてこれまでやってきたことと、全く違う知識と経験がないと創薬ができないことが良く分かったということでした。まさに、筆者もそのとおりだと感じました。




AG/SUM 2018

Agri Summit=AG/SUMというイベントに行ってきました(2018年6月12日)。ピッチイベントがあり、前半13社、後半13社の計26社がピッチしました。

日本のベンチャーが計8社、米国8社、トルコ2社など、出身国は多彩。
(前半)
Finless Food(米): 細胞からつくるバイオフィッシュミート
Sugarlogic(米):母乳にしかない栄養素を含む機能性砂糖
Base Food(日):完全栄養パスタ
Inspecto(イスラエル):ポータブル汚染物質検査機
Agribody Technologies(米):遺伝子編集作物、収量、日持ちをアップ
Musca(日):ハエの幼虫による飼料と肥料の生産
OriginTrail(スロバニア):ブロックチェーンによる食の安全確保(トレーサビリティ?)
Tarfin(トルコ):農家に対する作物販売時の金融Fintech
JuiceInnov8(タイ):糖分を取り除いたジュース
Fermenstation(日):コメからプレミアムなエタノール製造
Tarsens(トルコ):多波長カメラで田畑をリアルタイムに検出、ドローン利用
RealtimeData(豪):漁業情報をタブレットで提供、サブスクリプションベース
PlantX(日):生産性を5倍にする植物工場、ハード販売
(後半)
Huxley(蘭):AIとARによる栽培支援ウェアラブル、画像解析で野菜工場運営
Earth Rover(英):火星探査技術を使った農業用ロボット(総合ロボットシステム)
Impact Vision(米):肉の柔らかさや魚の鮮度を画像で判定
AVA Winery(米):ワイン、バニラ、コーヒー、チョコレートなど付加価値の高い作物の人工製造(遺伝子編集?)
Gra&Green(日):接ぎ木で作った作物を販売し、今後はプラットフォーム化する
信州大学農学部(日):幹細胞から家畜を作る
Biome Makers(米):ワイン畑の土壌分析し、品質と収量を向上
Nofence(ノルウェー):放牧地用のバーチャルフェンス、家畜に首輪をつける
biomarker.io(米):サプリの効果をデータ化する
AFINGEN(米):Cysgeneという技術で丈夫な作物
FLUX Blockchain(米):仮想通貨とブロックチェーンを農業に適用
Farm Alliance(日):農業生産見込みの証券化
VegiBus(日):やさいバスによる生鮮食品の流通

信州大学の幹細胞から家畜を作る技術は、まだ企業化されていませんが、将来有望な産業になるのではないでしょうか。今のところ、このような人工的な肉が売れるとは思えないので、そのあたりの解決が必要ではあります。人工ワインも同じです。
農業用ロボットというと、キャタピラーやコマツなどのトラクターの変形版として農業重機メーカーが参入していると思いますが、これからはベンチャーも続々と参入してくると思います。

「みずほ賞」を獲得したのは、MUSCA, GRA&Green, PlantXの3社でした。
私は、授賞式までに退席したので、その他の賞があったのか分かりません。


2017年11月16日木曜日

TechCrunch Tokyo 2017

今年もTechCrunch Tokyoに言って来ました。Startup Battleの登壇企業20社のうち、明日のファイナルラウンドに選ばれたのは以下の6社。
 Voicyは、ニュースを音声で聞くということでしたが、ようするに音声のユーチューブ。元トーマツベンチャーサポートの緒方君が社長になっていました。日本では、ボイスメールやポッドキャスティングが流行らなかったことから、音声だけのメディアにどれだけ関心が集まるか注目されます。スマートスピーカーが普及するようだと、このビジネスも盛り上がるかと思います。音声も捨てたものじゃないというカルチャーを醸成できるかがポイント。
 東京ロケットは面白かったので、私も高得点にしました。職人さん業務の受注と職人さん探しのアプリ。TRUSは、建材のeCommerceサイトで、BtoBで設計事務所向けに、これまで紙のカタログでやっていた建材選びをウェブでできるようにした。これも良いと思いました。どちらの会社も、業界のことをよく知っている人が社長です。
 選ばれた6社以外だと、FunLifeというのが良かったです。ARCミラーという等身大のカメラつきモニターに、インストラクターがトレーニングの模範をする画像が映り、トレーニングを受ける人がそのインストラクターどおりの動作をしているかチェックをしながら、トレーニグできるというもの。ようするに、インストラクターがいなくても、モニターのインストラクターが教えてくれる、という装置です。ゲーム機にも使えそうです。
 給料前払いのPaymeは、選ばれると思いましたが落選しています。企業と契約しておき、社員が申請したら、給料日前に前払いしてもらえる。手数料3%とのこと。同業者はこれより高いということなので、同業があるということになります。企業を介さず、直接個人に貸しつけたら、貸金業になるので、手数料3%は年利で20%を超える(前払いの日数による)ため、利息制限法に引っかかる可能性があります。そういうことがあるため、当社は企業と契約するという形態をとっているそうです。これもFintechです。
 あとは、Antaa(アンター)。実名で医者が医者の質問に答える。ボランティアベースでの質問回答サイトです。うまく運営できるか心配ですが、そこそこできているようです。医者が集まるサイトであれば、M3のようにいろいろと別のことができるので、期待が持てます。質問回答で満足せず、そういうビジネスマインドがあるかどうかがポイントです。

株式会社東京ロケット
建設業における職人の労働環境をITの力で解決する「助太刀くん」を運営。職人が職種と居住地を入力すれば条件にあった現場情報が届くほか、勤怠管理やペイメントサービスを提供する。
株式会社justInCase
テクノロジーで保険の無駄を省くInsurTech。必要な時に必要なだけ加入できる保険サービス「justInCase」にて、新しい保険のかたちを提案。
株式会社scouty
AIヘッドハンティングサービス。技術系質問投稿サイト、イベント登録サイト、SNSなどから優れた人材の情報を自動的に収集し、最適なタイミングでヘッドハンティングができる。
株式会社トラス
建材をメーカー横断で比較検討できる、建築設計者施工者向けクラウドサービス「truss(トラス)」を運営。建材メーカー各社の製品を横断して、法規の準拠や性能、価格やデザインなどを元に建材選択ができる。
株式会社空
ホテル経営者向けに無料の経営分析ツール「ホテル番付」を開発。すでに運営中のホテル経営者向け料金設定サービス「MagicPrice」と合わせて、業界の価格最適化を進める。
株式会社Voicy
パソコンやスマートフォンのアプリ向けの音声放送プラットフォーム「Voicy」を提供。現在は約25の新聞や雑誌の情報を音声で流しており、AIスピーカーとの連携なども進める。

2017年11月14日火曜日

3メガ銀がICO研究会

 3メガ銀がICO研究会を立ち上げたということです。ICOは、イニシャル・コイン・オファリングのことです。仮想通貨で資金調達するということで、IPO(イニシャル・パブリック・オファリング=新規上場)をモジってICOと呼ばれています。

 同じ日にQuoine(コイーネと読むのでしょうか?)がICOで124億円のICO最高額の調達したという記事も掲載されていました。この会社は、Quoinexという仮想通貨の取引所を運営する会社です。その前の最高額は109億円でテックビューロという仮想通貨技術の会社でした。

 何だか世の中どうなっているのか、分かりません。非上場の会社が簡単に100億円以上の資金調達ができる時代になったのでしょうか。これは仮想通貨関連の会社の特権なのでしょうか。

 金融商品取引法では、50人以上から1億円以上の資金調達をする株式会社は、有価証券届出書が必要で、そこに含まれる財務諸表には公認会計士等の監査が必要、となっています。一度有価証券届出書を提出するとその後は継続開示会社になって毎年有価証券報告書の提出が必要になります。それには監査報告書が必要です。
 
 これは、いい加減か決算を開示する会社があれば、出資する人が騙される可能性があるので、それを防ぐことを目的とした制度です。先進国ならどこでもある制度です。

 仮想通貨を利用した資金調達は、どう考えたらよいのでしょうか。100億円を調達した会社の決算がどうなっているかについては、会社が作った決算書をそのまま信用する、というのが現状のやり方と思います。または、決算書なんか見ないで出資する、ということかもしれません。

 そもそも普通の人は決算書を見てもあまり分からないですし、有価証券届出書をしっかり見る人も少ないでしょう。ベンチャー企業の初期段階では大赤字ということも多いので、決算書を見ても意味がない、ということも言えます。そういえば、私が先月出資したベンチャー企業は、まだ設立後決算期が来ていないこともあり、決算書を見ないで出資しています。

 ICO(イニシャル・コイン・オファリング)については、下記の私のブログでも少し検討しています。
https://www.blogger.com/blogger.g?blogID=3405977001642113981#editor/target=post;postID=4628691306881655217;onPublishedMenu=allposts;onClosedMenu=allposts;postNum=3;src=postname

2017年11月12日日曜日

小さなお店のネットワーク

「がっちりマンデー」(日曜日7:30-8:00)ではいろいろなベンチャー企業が紹介されていて勉強になります。
今日のタイトルは、

あなたの知らない「お店」ネットワーク!
街の小さなお店が加入!出前が激増する謎の組織…?


次の3社が紹介されていました。
・出前館(飲食店の出前)
・トラボックス(運送手配)
・ESTDOC(クリニックの検索と予約)

出前館
 町の飲食店に出前が発注できるサービス。地域を入れると飲食店一覧が出て、注文すると、飲食店にはFAXが届くという仕組み。
 なぜFAXなのかというと、飲食店にはパソコンを置くスペースがない、パソコンの前に座ってメールを受けるような時間がとれない、という事情があるからです。(私のワインビジネスも飲食店向けなので、そのような事情を念頭におき、スマホから注文できるようにしています。ワインを出す飲食店で出前をするところは少ないように思いますが、受注確認はメールではなくFAXがいいかもしれません。ちょっと検討してみます。)
 飲食店側からは、忙しくなると出前が遅くなるので、出前までの時間(何分かかるか)をFAXから入力でき、それがウェブサイトに表示されます。
出前を発注したのにいつまでも届かないということあありうるので、反応がない飲食店には出前館の会社が電話でどうなっているかチェックする。売り上げの5%を出前館がもらう。
 あと、出前をしていない飲食店には、出前の配送サービスを受託し、出前配送は新聞配達店に依頼する、というところまでやっています。
 営業をして、システムを使ってもらう飲食店を増やした後の手間がかかるビジネスのように思います。

トラボックス
 運送発注のサイトは、調べるとハコベル、運送net、レントラ便などが出てきます。この会社は2001年の日経インターネットアワードを受賞しているようです。会社設立が2000年のようですので、それからまる17年間。似たようなサービスが増えてくると伸び悩みます。社長や役員が金融機関出身なので堅実経営なのかもしれません。会社のウェブサイトを見ると、新年会は派手に帝国ホテルでやるようです(参加料1万円)。

ESTDOC
 病院検索サイトはいっぱいあります。私も一度相談をうけて、このビジネスについて考えたことがあります。検索ができても「予約」ができないと使われないですし、マネタイズもできません。クリニック側に予約システムを提供してそれを使ってもらうのがポイントと思っていましたが、この会社は実際にそれをやっているそうです。
 予約制のクリニックは、このシステムを使うと自動的に予約が入ってくるので便利。初診の人が入ったときに1人3000円をこの会社が徴収するのだそうです。それ以外は無料。
 初診以外は、無料で予約システムが使える、というのが「売り」ということになります。当然、クリニックが電話やメールで予約をうけたら、このシステムに入れれば、その時間帯は予約不可の状態にできるのだと思います(未確認)。
 大きい病院は、予約制でないところが多いですし、予約制であるときは自分のところの予約システムを持っているはずですので、これを使うメリットはあまりないと思います。たとえば、9割の患者が自病院の予約システムで予約を受けているのであれば、あと1割の空き状態をESTDOCの予約システムに入力しておく必要があるからです。非常に面倒(システムの連携もできるかもしれませんが、個別にコストがかかります)。 
 これについては、多数の病院の健康診断の予約をインターネットで受けつけている健保組合にヒヤリングに行ったことがあります。病院には予約システムがありますし、健保組合はいくつもあり、特定の健保組合の予約システムを病院が使ってくれるはずがありません。N対Nの関係になります。
 これはどのように解決しているかというと、「旅行代理店の予約と同じ」でした。あらかじめ病院が空き日程を健保組合に割り当てるというやり方です。もらった空き日程を健保組合が組合員に公開して予約をうけ、予約を受けたら、病院に知らせる、というやり方になります。期限が迫ってきたら、健保組合が予約を受けていない日程は、病院に空き日程を返すことになります。予約が多い健保組合は、空き日程を追加して病院から貰えばよいのですが、そんなフレキシブルなことは多分やっていないと思います。
 よって、ESTDOCの予約システムしか使っていない小規模なクリニックであれば、このシステム外の予約は少しだけなので、その情報をESTDOCの予約システムに入力するだけ済みます。
 これも、トラボックスと同じで、成功すると真似されやすいビジネスなので、スケールするのは難しいのかもしれません。ただ、出前館と異なり、サイトに掲載されてからの手間は少ないビジネスと思います。
 病院検索サイトは、このように小さなクリニック対象のものもありますが、「名医」を検索したり、特定の病気の手術件数を検索したりするようなサイトもあり、工夫の余地はありますが、大きなビジネスにするのは難しいのかもしれません。なお、医者向けのサイトには「エムスリー」があり、東証一部上場です。