2017年4月9日日曜日

新経済サミット2017 - DAY1

4月6日、7日の2日間、第5回目の新経済サミットが開催されました。これは新経済連盟が2013年から毎年開催しているイベントです。新経済連盟は、楽天の三木谷社長が、経団連を脱退した後、立ち上げた第2経団連とも言える団体です。経団連に入っている大企業以外が会員ですので、必然的にベンチャー企業が中心になります。どうしても三木谷さん色が出てしまうことから、有力な会員企業は三木谷さんに近いところとなっています。ソフトバンクの孫さんはこれには参加していません。ただ、今回初めて、孫正義さんの弟の孫泰蔵さんが登壇していました。

私は、初回から欠かさず来ています。海外からのベンチャー企業やVCが登壇しますが、三木谷さんはこのサミットを利用して、それらの会社との商談も行っているような感じを受けます。このサミットは、楽天の持ち出しになっていると思いますが、この機会をうまくビジネスに利用しようとされているのではないかと思います。考えすぎでしょうか。

Day1-4月6日のプログラムとその感想は次のとおりです。
午前のプログラムは正式な開会前のおまけ的な位置づけになっています。開会は午後からです。

1.  起業がイノベーションを巻き起こす
VC4社のパネルディスカッションです。シリコンバレーでは、機械学習、AIが非常に盛り上がっている。その関連ベンチャーが急増しているということだと思います。ひと昔前のオンデマンドエコノミーは、下火になっているとのこと。UBERはオンデマンドではありますが、AirB&Bと同じシェアリングエコノミーの部類になるということでしょう。第二、第三のUBERやAirB&Bが大量に出てきているとのこと。大きな流れのお話はこれぐらいで、あとは全体感のないコメントばかりの印象でした。
なお、会場の音響があまり良くなく(ホテルとしては普通ですが、)、また、各人がスピーチのようにはっきり話すわけではないので、英語が分かりづらい点があり、私の聞き逃しも多々あったと思います。次のセッションからは、同時通訳レシーバーを借りて、英語の方を補聴器のように使って聞きました。そのほうが良く分かります。



VCの人たちの一口コメントは次の通り。
- シリーズAからEXITまでは8ー10年(たぶん昔より長くなっているということだと思います)
- ベンチャーはピッチの時だけでなく、常に評価されていると考えた方がよい。
- 毎週15社のベンチャーに会うが、良いベンチャーが一瞬で判る。(ほんとうでしょうか。社長の勢いで判断できる業種に絞ったら可能かも知れません。)
- 事業計画が隙なく作成されていたら、別のVCを含む誰かが支援していることを示しており、そうなると他のVCも投資チャンスを逃さないように身構える。(他力本願の発言では? 注目されるベンチャーに資金が集まるのはこのせいでしょう。)
- VCは資金を提供するだけでなく、アドバイスもする。ただ、アメリカ以外の国のVCのアドバイスする能力はそれほど高くない。(日本のVCが聞いたら気を悪くします。ただ、資金力が違うので、専門家の数と質はまちがいなく高いと思います。)
- 起業するときに、事前調査をしっかり行う必要がある。たとえば、日本では誰もやっていないビジネスでも、海外ではすでに数年前からやっているということもある。
- 失敗はビジネスの失敗であり、人生の失敗ではない。ミッションを持って、次のビジネスを始めればよい。

2.  NEST STARTUP CHALLENGE
毎年ベンチャーのピッチがあり、優勝者が表彰されます。最初は本会議の開会後のセッションの一部としてこのようなコンテストが行われていましたが、ここ2、3年は、開会が1日目の午後になり、午前にピッチ会を開催する形式になりました。
11社のベンチャーが登壇しました。前回は、英語でのピッチでしたが、今回は日本語でもよいということになったようです。また、これまでは、新経済連盟が事前に選抜したベンチャーが登壇していましたが、今年からはVCなどのベンチャーエコシステムが推薦したベンチャーが登壇するやりかたに変わりました。推薦者は、VCだけでなく、経済産業省、福岡市、神戸市、トーマツベンチャーサポートなども含まれていました。EYとKPMGはスポンサーですが、トーマツはちゃっかりこんなところに出てきています。私が居たときもそうでしたが、トーマツらしいところが出ています。
各社のピッチの様子は、NEST STARTUP CHALLENGE2017のblogをご覧ください。

3.  ベン ホロウィッツ

VCの共同創業者です。知らない人だと思っていましたが、HARD THINGSという本を書いた人です。私はこの本をだいぶ前にAmazonでKINDLE版を購入していましたが、そのまま忘れて読んでいませんでした。この人は、ベンチャーを創業し、苦労の末にHPに売却して成功した人です。しかし、この本は成功物語ではなく、ベンチャーというのはこんなに苦労するものであることを書いた本であることをここで知りました。変なタイトルだとは思っていました。この方は、三木谷さんのサンフランシスコの自宅のお隣りさんだそうです。
キーノートスピーチということですが、三木谷さんとの対談になっており、この本の話以外、これはという情報はありませんでした。あとで本を読んでおきます。三木谷さんの英語は分かりにく、インタビューワーとしても、これはという情報を引き出すことをされていないようでしたので、お隣りさん同士の2人の雑談という感じでした。調べてみるとこのVCは多額の資金集めを短期間で行ったことで有名なところでした。投資実績がものを言う世界ですが、ベンチャーと同様に、特定のところにお金が集まる傾向がある感じを受けました。
なお、全般的にモデレーターが良くないのは、これまでと変わりはなかったですが、今回は、2日目のドローンのセッションを担当しがティム ホーンティヤックという科学ジャーナリストが非常によかったです。うまく情報を引きだし、議論を進めていました。

4.  サステナブルな未来のビジョン

サーキュラーエコノミーは、リサイクル経済を一歩進めた感じのことのようですが、アクセンチュアの程さんがこれを紹介したあと、LIFULLの井上氏と孫泰蔵氏との話があまり繋がっていませんでした。LIFULLは今年の4月にネクストから社名変更した東証一部上場会社です。不動産情報のHOME'Sを運営している会社。会社名は知りませんでした。確か競合のat HOMEの方は上場していなかったと思います。
その会社の井上社長がインタビューをするような形で、孫さんとの対談のようになってしまい、途中でモデレーターの程さんの存在を忘れさせるような場面もありました。
この2人の話は、Living Anywhereです。これからはグリッドに縛られず、どこにでも住めるようになるはずなので、それに関するベンチャーを支援する一般社団法人を設立したとのことでした。サーキュラーエコノミーは、だから何?といったボヤッとした話でしたが、こちらの方は具体的なビジネスにつながりそうです。
グリッドというのは、ライフラインで、電気、水道、通信などを指します。これが世界中どこにいても得られるようになれば、田舎、海の上、さらに宇宙でも仕事ができるようになります。すぐには来ないですが、こうゆう時代が来ることは間違いなさそうです。そのためにはイノベーションが必要ですので、ベンチャーに期待しよう、ということが彼らの考えです。

5. トランプ大統領誕生

ここで、政治経済の話題に切り替わります。テレビでお馴染みのウォール・ストリートジャーナル東京支局長のピーターランダースさんがモデレータ。ここではキャッシー松井さんの英語が非常にわかりやすく、話の内容も明解でした。
印象に残ったのは、日本の雇用がここまでタイトになると=>賃金が上がる=>インフレになる=>利上げされる、というシナリオになるのは明白ということでした。これは私の意見と同じでしたので、我が意を得たり、という感じでした。
現状、この話はマスコミでは取り上げられず、株価にも反映されていません。
次に、トランプ大統領の保護主義政策に対抗して日本がすべきことは次の2点。
(1)規制緩和をもっと進めて、国内需要を増やす(松井氏)
(2)アジア経済圏の連携を深める(船橋氏)

6. 動画配信メディアの未来

AbemaTVを始めたサイバーエージェントの藤田氏と元LINE社長でC Channelを始めた森川氏。
AbemaTVはコマーシャルは見ましたが、実際どんなものか知りませんでした。テレビ局のように放送し続けており、30チャンネルあって24時間放送しているそうです。録画は有料ですが、放送を見るのは無料で広告で収益を稼ぐというテレビと同じ方式。起業から1年ですが、藤田氏の時間の9割はAbemaTVに費やしているとのこと。ビジネスはまだ投資段階で、1年間の赤字が200億円とのこと。かなりつぎ込んでいます。
森川氏の方は、もっと私には関係のない世界です。女性雑誌の動画版ということです。LINEを退任してすぐに立ち上げたビジネスということで新聞などで報道されていましたが、その後どうなったか知りませんでした。少し方向性を調整した結果、最近はアジアを含めて需要が伸びているとのこと。
動画は、Youtubeが火をつけましたが、Netflixで次の段階に移った感があります。

7.   小林久隆

本日の最後は、米国の国立がん研究所と米国衛生研究所(NIH)の主任研究員である小林先生。知る人ぞ知る有名な先生です。先日、朝のニュースでも紹介されていました。昨年の新経済サミットでも、三木谷さんがスライドかビデオで紹介されていました。実は三木谷さんが個人でこの先生の技術を使った創薬ベンチャーに出資しているそうです。(最大の株主とのこと)
ある特定の抗体を患者の体内に注射すると、がんにくっ付きます。そのあと体外から特殊な光を当てるとがんが膨張して破壊されるというものです。光の方は薬ではないので、注射する抗体が医薬品となると思います。2日目最後の懇親会で、ご本人にも少しだけお話をさせていただきました。
米国FDAの治験はフェーズ1が終わりフェーズ2に入っているそうです。フェーズ1は安全性の検査で、フェーズ2は実際に薬効があるかどうかの検査になります。そこで止まる薬はたくさんあります。でもこれはかなりの確率で上手くいくようなお話でした。
これが上手くいくと小林先生は、ノーベル賞候補者になれるという話もあります。三木谷さんはどこで見つけてきたのか、NIHが所有する知財の実施権を受けるベンチャーの起業時に出資したそうです。会社名はアスピリアン セラピューティックス。
昨年の特別講演(今年は小泉元首相)は、ノーベル賞の山中伸也先生だったと思いますが、これは小林先生繋がりで講演依頼されたのかもしれません。

これでDAY1が終了しました。



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