2017年4月3日月曜日

慶應義塾大学医学部 第1回「健康医療ベンチャー大賞」

健康医療ベンチャー大賞のコンテストが、3月26日(日)に慶應大学三田キャンパスで開催されました。私は、前日の土曜日に菅平高原でスキーをしていたのですが、翌日のスキーは諦めて、朝一番に宿を出て会場に駆けつけました。

主催は、慶應医学部となっており、学部がベンチャーコンテストを開催するのは珍しいと思います。これが第一回で今後毎年続くものと思われます。学生の部と社会人の部がありますが、医学部の学生・卒業生に限定しておらず、健康医療分野であれば、他学部の学生・卒業生も参加できるようです。

当日は、決勝進出した次のプロジェクト・企業が発表しました。
<学生部門>
Doc Travel:海外からの旅行者向け遠隔医療相談
Q:医師と患者の会話からカルテを生成するアプリ
訪問予防歯科DenQ:企業向け予防歯科定期診療サービス
イノベーティブヘルスデザイン:農作物栽培による認知症ケアサービス
Cancer Journey:がん患者とサポーターの情報交換により、がん患者を支える。

<社会人部門>
L Taste:ソルトチップ(減塩チップ)により、減塩料理を美味しくする
スマートCL:スマートコンタクトレンズを用いた開発・サービス
アラジンケア:インスリン療法支援システム
O:世界初、体内時計を可視化して、睡眠を改善するサービス
Epigno: AI手術室マネジメントシステム

上記のうち、学生部門のビジネスは実際に起業しているわけではないようでしたが、起業しても成長するビジネスにはなりそうもない感じがしました。その中では次のプロジェックトのアイデアは良かったと思います。

Q: 医師が電子カルテを打ち込むのは手間がかかります。患者との会話を録音すると、それが単に文字になったところで、カルテにはなりません。そのデータを解析して要約するところまでできれば、そのあとカルテに加工することは簡単にできそうです。
このようにVoice to Textの技術を利用し、さらに文章解析を行ってキーワードを拾って要約するという考えは他でも聞いたことがあります。ただし、その実現は簡単ではなさそうな気がしました。

社会人部門は、さすがに気合いが入っており、すべてが起業してるベンチャーでした。このなかで、「ソルトチップ」を開発中のL TasteとコンタクトレンズのスマートCLが印象に残りました。

L Taste:
減塩チップとアーモンド1粒を袋に入れて、会場の入場者全員に配布していました。プレゼンのお話を聞きながら試すことができました。チップといっても、半導体ではなく5mm角の不織布のような感じのもので、舐めると微妙に塩辛いです。舐めていると口の中で溶けるそうです。(私は吐き出しましたが、、)。アーモンドを同時に口に入れて噛むと、確かにアーモンドに塩味がついているような感じがしました。
このチップを歯の裏に貼り付けるといった説明だったと思います。これをどのように固定するのか不明でしたが、うまく固定できれば、あまり違和感なく塩味が染み出すのではないかと思いました。

スマートCL: バイオセンサー機能が内蔵されたコンタクトレンズです。涙からいろいろ測定できるようですので、これができれば利用範囲が広がると思います。私の知っている東大発ベンチャーでは、涙から血糖値を測定する医療機器を開発中です。グーグルが同様のもの開発していると思います。実用になるものを開発し、各国の医療機器の承認を取るまでにはかなり時間がかかるものと思います。

<審査発表>
L Tasteが大賞を獲得しました。今後の課題は、ソルトチップだけでどれだけの収益規模が予想できるかだと思います。病院だけでなく、一般消費者向けにも販売するようにしたらある程度は伸びるでしょう。当然、海外市場もあります。同業他社が出てくると収益が伸び悩む可能性もあります。

Epigno:AIによる手術室マネジメントシステムが特別賞になりました。手術室での時間管理を知っている医師ならではのアイデアです。ホワイトボードなどで手管理されている手術の時間を効率的に管理できれば、同じ数の手術室でもより多くの手術ができるようになります。システム販売もありますが、コンサル的な感じがしたので、大きな収益規模が期待できるかどうか分かりません。

学生部門では、Doc Travelが最優秀賞を獲得。会場に配布された資料には、日本人の海外旅行者向けのスマホのスカイプなどでの医療相談サービスだったのですが(これだと日本語でサービスできます)、プレゼンは日本に来る外人旅行者向けに変わっていました。ピボットしたのですね。この場合、多言語対応が必要となり、それができる医者の確保が難しいのではないかと思います。日本では、遠隔医療サービスが保険適用されるようですので、これを狙ったサービスの方が現実的と思いました。ただ、システム開発は学生にはハードルが高いかもしれません。



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