2017年9月13日水曜日

これからはIPOではなくICO?

 IPO = Initial Public Offering (最初の公開募集)は、新規上場の時に新株発行をして出資する人を募集するところから、IPO=新規上場と考えられています。
 最近、ICO = Initial Coin Offeringが話題になっています。これは、Bitcoinのような仮想通貨を使ったベンチャー企業の資金調達方法の一つです。仮想通貨市場で、「トークン」(NYの地下鉄の切符もトークンだったと思います。今はメトロカードに変わっています。)と呼ばれるものを発行して、その代わりに現金を調達するというものです。米国では、150億円調達した企業があったとのことです(その後、その会社はプロジェクトに失敗したそうです)。
 日本にもCOMSAという仮想通貨の市場が10月ごろにできるそうです。そこで最初に資金調達するのは、COMSA自身ということです。
 トークンを買った投資家は、どうするのかというと、市場でそれが値上がりしたら売却して儲けるそうです。当然値下がりすることもあります。
 そういう点から、株式市場での株式の売買に似ています。しかし、株券とトークンは大きく違います。会社法上、株券の所有者は株主として一定の権利が保証されていますが、トークンは民間の市場内での取り決めだけしかありません。
 会社法上、会社は年1回、事業報告を株主にしなければなりませんが、トークンの所有者に対してそのようなことは要求されません。(そうするような市場の取り決めがあれば別です。ただし、監査を受けるようなことまで要求されるとは思えません)
 株式を発行すると会社の「資本金」となります。トークンを発行する会社では、それは何になるのでしょうか。「長期預かり金」ではないかという人がいます。それは市場の取り決めでどうなっているかに依存すると思いますが、筆者は、そもそもそれは返金する必要があるものとは考えにくいと思います。トークンで「資金調達」するのでありお金を「預けて」もらうのではないと思います。
 トークンは、会社法を改正しない限り資本金にはできません。そうなると残るのは寄付金または受贈益です。トークンを発行して投資家からお金を寄付してもらうということではないでしょうか。返金する必要がないものは、もらったものと同じです。
 よって、現金受領時に「課税」されると考えられます。株式の発行は「資本取引」と言って、損益には関係しない取引ですが、トークンの発行は寄付なので受贈益が発生する「損益取引」となると考えるのが素直です。
 一方、トークンには、ゴルフ会員券のように売却できる一種の有価証券という性格もあります。バブルの時は、ゴルフ会員券を売って儲けた人も多かったと思います。ゴルフ会員権は、ゴルフ場側ではどんな会計処理になっているのでしょうか。
 ゴルフ場の会社では、ゴルフ会員権は「長期預かり金」になっています。会員から脱退する時は、それを返金してもらうことができます。ゴルフ会員権を市場で売却すると会員が変わります。その場合は、ゴルフ場は返金するのではなく、書き換え料を徴収して会員名を書き換えます。書き換え料はゴルフ場の収益になります。
 トークンは、ゴルフ会員権に似たところがありますので、「長期預かり金」だという人がいるのだと思います。ただし、ゴルフ会員権は、会員に返金する前提があるので長期預かり金なのであって、トークンは、返金する約束はないはずです。
 やはり、トークン収入は、寄付金と考えるのが良いと筆者は思います。そうなるとICO市場は成立しない、ということになるかもしれませんが・・・
 税務当局からの見解はまだ出ていないと思いますが、10月に実際にICOする会社があるのであれば、早めに税務上どうなるかハッキリさせた方が良いと思います。
 あれだけ法律や証券取引所規程で規制しても粉飾決算やインサイダー取引が起こっているのですから、規制がないICO市場では、何が起こるかわかりません。トークンを買うということは、寄付したことと同じ、と考えておくのが一番良いと思います。


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